ひぐらしの記 連載『少年』、四日目 少年の家のある所を村中では、「田中井手集落」と、呼んだ。田中井手集落には少年の家を含めて、四、五軒があるにすぎなかった。隣家とはくっついていたが、ほかは飛び飛びにあった。先に書いた、マキさんの家もその一つだった。きわめて小さな集落である。と... ひぐらしの記前田静良
ひぐらしの記 連載『少年』、三日目 少年の家から100メートルほどの先には、往還(県道)を挟んで同じ「田中井手集落」に住む、古田マキさんの家があった。マキさんは、少年には訳知らずの独り暮らしだった。庭の一角には裏山の地中から、冷たい山水が滾々と湧き出ていた。特に夏休みにあって... ひぐらしの記前田静良
ひぐらしの記 連載『少年』、二日目 少年の家は、内田川の川岸に建っていた。川をじかに背負っていた。家は山背に建てば、四季折々の山の移ろいが楽しめる。そのぶん、山崩れが隣り合わせにある。川背に建てば、春先の水面の陽炎に目を細めて、瀬音に身を委ねることができる。だけど、洪水の恐怖... ひぐらしの記前田静良
ひぐらしの記 連載『少年』、一日目 4月24日(月曜日)、ほぼいつもの時間に目覚めて、起き出している。しかし、現在の心境は、普段とは様変わっている。わが人生は、すでにカウントダウンのなかにある。未来はなく、過去にしがみついても、もはやいっときである。私は聖人君子ではなく、やは... ひぐらしの記前田静良
ひぐらしの記 御礼 平洋子様。お義母様(恩師)の近況報告と元気なお姿(写真)を賜り、感謝にたえません。ありがとうございました。この先は、恩師がうら若い受け持ちの頃の呼称、「渕上先生」で記します。心中に根づいている懐かしさを、いっそう強く蘇らせるためです。渕上先... ひぐらしの記前田静良
ひぐらしの記 死期が近づいている 4月22日(土曜日)、5:02,天気模様のわかる夜明けはまだ先である。現在は、朝日の見えない夜空である。もう、朝日が見えてもいい時間帯である。曇り空の夜明けになるのかもしれない。もはや、わが文章はネタ不足である。「ひぐらしの記」は継続が断た... ひぐらしの記前田静良
ひぐらしの記 出会いがしらの「望郷」 4月21日(金曜日)、5:18,朝日の輝きを隠し、薄っすらと夜が明けている。きょうの天気予報は聞きそびれている。きのうに続いて昼間は、夏日の訪れるになるのであろうか。確かにことしの気象は、前倒しの早めぐり観を示している。いつもであればゴール... ひぐらしの記前田静良
ひぐらしの記 焦り 4月20日(木曜日)、曇天だがとうに夜が明けている。焦る心は弥増している。きのうはぐっすり寝た。きょうは寝すぎた。どちらにしても、文章はお陀仏である。二度寝にありつけないよりはるかに増しだが、わが心身には避けようのない焼きが回っている。おの... ひぐらしの記前田静良
ひぐらしの記 ルーチン 4月19日(水曜日)。5:41。ぐっすり眠れた。気分は良し。さあ、これから書こう。いや、書かない。青空に朝日が輝いている。久しぶりに、かつてのルーチン(朝の道路の掃除)へ向かおう。途切れていた、生活のリズムを取り戻すためである。まったく、自... ひぐらしの記前田静良
ひぐらしの記 欲得まみれの「この先のわが生活信条」 4月18日(火曜日)、4:24。実際にははるか前に目覚めて、起きている。やはり願う、熟睡と安眠は叶えられず、挙句この先、寝不足状態が続きそうである。人生の晩年と精神の動揺にあっては、仕方ないと思うところである。次兄の終焉の病床で看取りを続け... ひぐらしの記前田静良