中国、木村様からの航空便・年賀状

 大陸と言おうか、異国と言おうか、ずばり中国からはるばる飛行機で、わが手に届いた葉書を眺めている。文面は何度も読み返している。葉書であるゆえに短い文章である。しかしながら、異国で書かれた文章はありがたく、かつ興味津々である。限られた狭いスペースには細字で、優しい人情が詰まり溢れ出ている。それは、中国で教師生活をされている木村様からいただいたお葉書である。本来、いただいたお葉書にははがきで、あるいは便箋に綴った封書や手紙などで返礼すべきこととは心得ている。それが可能なようにお葉書には、木村様の現住所が書かれている。それなのに私は、無礼にも今回もまた掲示板上に、短く葉書程度の返礼文を書いた。この無礼な行為に対して私は、心中にはかたじけない思いがいっぱいである。
 掲示板上で書かざるを得なかったことには、こんな理由がある。わが人生83年間、私は航空便などまったく用無しに過ぎてきた。だから、生き恥晒しの上にさらに、私には無知ゆえの航空便に対する怖がりがある。端的に言えばそれは、書かれている住所あてに返礼文を書いても、届くかどうかの疑念だった。世の中では猫も杓子も、いや老若男女あげて、グローバル(地球規模)の往来が盛んである。それなのに私は、航空便にさえ恐れ慄いている。大きな恥晒しだけれど、確かなことだから隠すことなく晒している。一方では独り善がりに、掲示板上でも無礼でないかな? と、思うところがある。なぜなら木村様は、掲示板が恵んだ今や親しいご友人である。そのうえ友情は、一方的にいただくお便りで深まっている。これまでの私は、木村様との出会いはなく、掲示板を通して賜っているたなぼたのご友諠である。
 私は物心つき始めのころの幼心さながらに、物珍しく中国からの航空便の外形を眺め尽くしている。はがき一枚とはいえ、未知の物を眺める好奇心が沸き立っている。心中では日本の官製はがきを浮かべている。ちなみに、手元にある日本の年賀はがきと重ねてみた。すると外形は、年賀はがきよりいくらか小形である。そして、紙質は硬めである。郵便マーク(〒)も郵便番号もある。書かれている数字は、〒330013の6桁である。鎌倉市の場合は〒247-0053の7桁で、日本とは桁数が異なっているにすぎない。5枚貼られている官製切手は、日本とまったく同形である。5枚の切手には、それぞれ1元と、印字されている。2023.12.23.15と、刻印されている数字の上には、丸印で黒く消印が押されている。切手は、中国郵政CHINA発行の中国の美景シリーズらしくて、「大陸」の風景が描かれている。最上部には赤インクで、航空信・日本・年賀と、記されている。木村様は、年賀状としてくださったのである。以下には木村様のお許しを得ることなく、文面の一部を原文のままにお借りいたします。「無事に前便が届いたことを嬉しく思います。きっとこのハガキが届く頃には、掲示板の記述も復活されていると、拝察している次第です。遠い異国の地で学生たちと学びながら、前田様の文章を拝見するのを楽しみにしておりますので。小生、こちらで年を越します。」
 わが返礼のお便り:わが家に航空便が届いたのは、きのう(1月9日)です。木村様の励ましにあって、おりよく掲示板上には、長く途切れていた文章を再始動させています。異郷における疲れ癒しには程遠い雑文だけど、寸暇にお読みください。帰国を延ばされている日本は、元日から災難多く喧騒しています。元日には「能登半島地震」があり、きのうは新潟市で震度5の地震がありました。元田中角栄総理の旧邸が火災で、丸焼けになりました。わがふるさと県・熊本の華、歌手八代亜紀さんが急逝されました。異国・中国における木村様のご健勝を祈念いたします。敬具