深まりゆく春にあって、怯える人間界と自然界

 4月4日(火曜日、4:38)、起き立て早く夜明けはまだ先にあり、きょうの天気模様はわからない。もちろんきのうに続いて、好天気を望んでいる。きのうは、昼近くから照り始めた日光に重い腰を誘(おび)き出されて、私は大船(鎌倉市)の街へ買い物に出かけた。それゆえ、二日続きのきょうの買い物は、免れそうである。しかしながら買い忘れたとか、なんやかんやの自己都合の理由をつけて、きょうもまた出かけるかもしれない。なぜなら、普段、散歩をしない私の場合、買い物行は唯一、仕方のない散歩代わりを為している。
 買い物へ出かけないと私は、茶の間のソファに凭れて、まるでカタツムリ同然の動きのない姿で明け暮れる。言うなれば往復、バスに乗っての遠出、大船の街への買い物行は、わが飛びっきりの散歩を為している。
 3月から4月へと変わり、春は日を追って深まりゆく。4月の人間界は、別れの月3月が過ぎて、出会いの月である。きのうのテレビニュースはその確かな証しとして、人間界にあっては入学式や入社式光景を映していた。一方自然界は、わが眼前にこれまた季節特有のこんな風景をもたらした。
 買い物行にあって私は、バス通りにある最寄りの「半増坊下バス停」のベンチに座り、巡り来るバスを待っていた。すると、そよ風に煽られて散り急ぐ桜の花びらは、道路に花吹雪を舞った。道路をまるで花絨毯、また見ようによっては、小川の花筏風景を晒し出した。この風景は、わが眼前に突如現れた桜川みたいでもあった。ところが、やがて巡ってきたバスは、一瞬にしてそれらを蹴散らした。私は忍び難い切ない心情をたずさえて、ヨロヨロと乗車し、定期券を運転士にかざした。以下は、きのうのテレビニュースが報じていたことにかかわる引用文である。人間界および自然界こぞって、恐ろしいニュースである。
 【イルカ集団座礁と地震「安易な結びつけ早計」】(SNS投稿に識者、4月3日、月曜日、19:58配信 毎日新聞)。「大地震の前兆か」。千葉県一宮町付近の海岸にイルカ約30頭が打ち上げられた3日、ネット交流サービス(SNS)にはこうした投稿が相次いだ。東日本大震災の7日前にも同様の事態が起きており、不安に感じているようだ。果たして、イルカの集団座礁と大地震の発生に相関関係はあるのか。地震の前兆現象に詳しい「災害予測情報研究所」の織原義明代表は「完全に否定はできないが、安易に地震と結びつけるのは合理的ではない」と話す。織原代表によると、一宮町の北約80キロに位置する茨城県鹿嶋市沖で約10年間(2001年1月~11年3月)の状況を調査したところ、イルカを含む鯨類の集団座礁は6回確認されたという。だが、「6回は2~5月に集中しており、この時期の海流が影響したと推察される。鹿島灘(沿岸の海域)は遠浅で一度迷い込むと脱出しにくいこともあり、いろいろな要因が考えられ、地震と結びつけるのは早計ではないか」と語る。鹿嶋市の海岸では11年3月4日、イルカの一種「カズハゴンドウ」54頭が集団座礁し、同11日に東日本大震災が起きた。一方、15年4月にも鹿島灘の沿岸約10キロにイルカ156頭が打ち上げられたが、その後に大きな地震はなく「(東日本大震災の時は)偶然と考えた方が自然」とみる。
 今回の件については「詳しいことがまだ分からない」とした上で「集団座礁を防災情報として役立てるのは現段階では難しく、地震との相関関係は見いだせない」と話した。明けて夜明けの空には、淡く朝日が射し始めている。早起きのウグイスは、声高に鳴いている。しかしながら春深まりゆく季節にあって、人間界そして自然界共に、一寸先は闇の中にある。