2月5日(日曜日)、いくらか寒さを感ずる夜明け前にある。しかしながらもはや、たいしたことはない。季節は三寒四温という季節用語をたずさえて、確かな春へ向かっている。きのうは「立春」(2月4日)、昼間の陽気は体に汗が滲むほどのポカポカだった。茶の間のソファに背凭れながら私は、心中(季節は人間とは異なりこんなにも正直者なのか)と、自然界の恵みを礼賛した。驚く勿れ! 暖かい陽射しに呼応するかのように、庭中の梅の花は綻び、椿の花は色艶を濃くしていた。山から番(つがい)のメジロが飛んで来て、嘴(くちばし)を突っ込み、しばし椿の花の蜜を啜った。自然界の営みに酔いしれていっとき、私は自然界のもたらす和みに身を沈めていた。ところがどっこいテレビを点けると、世にも摩訶不思議、いや物騒な事件を報じていた。それは、日本列島の住民(国民)を怯えさせている強盗事件のあらましだった。この事件の全容を知るまでは、いまだ序の口である。ところが、この事件のみならずこのところのテレビニュースには、やたらと他殺すなわち殺傷事件が増えている。なんだか人の世は、一気呵成に惨たらしい様相を深めている。これらの事件に物価上昇を加えれば、確かに人の世は、生きにくく、住みにくくなるばかりである。さらに加えれば、このところ減少傾向にあるとはいえ、コロナの報道が尽きることは未だ闇の中である。あんなこんなで、人の世の憂さ晴らしを託すのは目下、自然界の恵みがイの一番と言えそうである。なかんずくその先兵を為すのは、のどかな春の訪れである。人間としてなんだか侘しい心地だけれど、それでも春の恵みにすがりたい気分山々である。「春よ、来い! 早く、来い!」。いや、「立春」過ぎて、もう、春は来たのである。