加速度を強める加齢化現象

 十月十七日(土曜日)、現在のデジタル時刻は2:49の表示にある。十一時過ぎに床に就いて、三時間ほどの睡眠を貪(むさ)り、二時過ぎに目覚めて、そのまま起き出してきた。短い睡眠をこうむり、私は憂鬱気分に陥っている。身に着いている習性とは、飛んだ災難である。いや、憂鬱気分の元凶はそれではなく、加齢にともなう現象である。
 学童の頃、教室で何度も聞かされたことわざの一つには、「失敗は成功の母」というものがある。確かに、若い頃であれば失敗は、リベンジ(仕返し)精神旺盛となり、そののちの成功にありつけることは多々ある。ところが、人生終盤における加齢化現象は、もはやお手上げ状態にあり、そののち糧(かて)になるものはない。気を張って行為・行動をすればやることなすこと、「年寄りの冷や水」と、揶揄(やゆ)されることが落ちである。言うなれば年寄りの加齢化現象には、捲土重来(けんどちょうらい)を叶える明日(あす)はない。それなのに加齢化現象は、まるで「雨後の筍(たけのこ)」のごとくに現れ出る。挙句、人生終盤の体験は、悉(ことごと)く様にならないものばかりである。私は目覚めて寝床の中で、こんな思いにとりつかれていた。そして、この思いを文章に著(あらわ)したのである。「おまえ、バカじゃないの?」の丸出しである。
 このところのわが身体は、加齢化現象を蒙(こうむ)りあちこちが蝕(むしば)まれてゆく。きのうには傷(いた)んでいた歯の一部が耐えきれずとうとう欠け落ちて、隙間ならぬぽっかりと空間を晒している。もとより、歯の損傷特有の痛みをともなっている。おのずから、現在の憂鬱気分の元凶を成している。リベンジ(仕返し)気分を挫(くじ)かれた歯の痛みである。加齢化現象に遭って、私には体験で知ることばかりが増え続けている。もとよりそれには、「失敗は成功の母」とは言えない。すなわち、私は体験で知る仕返しのできない人生終盤の苦渋に喘(あえ)いでいる。
 きょうは、この先が書けない。現在、デジタル時刻は3:29である。まだまだ、悶々とする夜長になりそうである。確かに、加齢化現象は、身体のあちこちで加速度を強めている。それに抗(あらが)えない、人生終盤の悔しさ、虚しさ、ひしひしである。