「悪徳の栄え」、人間不信

 言葉は必要に応じて生まれる。もちろん、事象が無くなれば死語となる。そして古来、事象が無くならないため、今なお存在する言葉は数多(あまた)ある。その一つには、「正直者は馬鹿を見る」、という成句がある。必ずしもすべてが意図した不正ではなく、制度(ルール)の不備、つまり申請等のわかりづらさもあるであろう。しかしながらこんな記事に出合うと私は、一緒くたに人間不信に陥るところがある。
 実際には、人間につきまとう悪徳にうんざりする。もちろん私は、世の中にはこのことだけではなく、さまざまなところでこれに似た事象があることを知りすぎている。そう思うと、今さらだけど人の世が、つくづく厭(いや)になる。
 【持続化給付金、返還申し出6千件 不正受給逮捕後に急増】(朝日新聞デジタル)。「新型コロナウイルスの経済対策の持続化給付金を不適切に受け取る事例が相次いでいる問題で、経済産業省は30日、返還の申し出が6千件以上あったと発表した。不正受給による逮捕報道を受けて申し出が急増しているという。」
 この記事では返還の申し出をしないままの人がどれくらいいるのかは、まったく分からない。すなわち、どれだけ多くの人が不正をたくらみ、今なおほおかぶりしているのかは分からずじまいである。まさしく、悪徳がのさばる「正直者が馬鹿を見る」現象である。こんなことでは、せっかくの善政に水を差されたこととなる。
 この件にかぎらずまるで泥縄式の政府の施策にあっては、さまざまなところで悪徳をのさばらしているようなメディアの報道が絶えない。すなわち、「GO TO トラベル(旅)」キャンペーンのほか、さまざまな施策において、付け焼刃施策による綻(ほころ)びが出てきているようである。この挙句にはこれまた、「正直者が馬鹿を見る」ことともなる。なんだか、「悪徳の栄え」を見ているようで、私はすっきりしない気分である。
 きょうは十月の最終日(三十一日・土曜日)、秋の夜長はこの先、いよいよ深まるばかりである。長い夜にあって、切なく人間不信がつのるばかりである。こんなことを書くようでは、歯を抜いた傷跡がズキズキと痛むばかりである。