九月最終日(金曜日)、いつものように(万古不易)、夜明けが訪れている。時々刻々、変わるのは人の世である。起きて私は、小難しい成句を浮かべている。生噛りの覚束ない成句ゆえに、電子辞書を開いて復習を試みる。自分勝手なお浚いゆえに、平に詫びるところである。説明文は、電子辞書の転記である。【兄弟(けいてい)牆(かき)に鬩(せめ)げども外その務(あなど)りを禦(ふせ)ぐ】「兄弟(きょうだい)は家の中では喧嘩をしても、外から侮(あなど)られるようなことがあれば、力を合わせてそれを防ぐということ」。例文「―、兄弟とは本当にいいものだね」。秋は物思いの季節である。異母兄弟を含めて多くの兄弟姉妹(戸籍の上では14人)にあって、次兄(九十二歳)を残すのみとなった。だれもが喧嘩一つしない兄弟愛を育んだために、必ずしもこの成句は、ピタリ適当と言えないところはある。しかし、幸運にもこの成句を浮かべずにはおれない、わが身のありがたさである。ネタ切れが招いた、とんだ報酬、すなわちわが身に沁みる成句である。「物思いの秋」は月を替えて、いよいよ特有の愁(うれ)いを帯びて深まりゆく。鼻風邪は、月替えに持ち込まずに済んだ。爽秋は、秋愁(しゅうしゅう)の季節である。視界、秋の朝日が輝いている。この先、私はどんな物思いに耽るであろうか。