季節の香り

 早朝に近くのポストまで郵便を出しに行く途中、どこからともなくキンモクセイの花の香りが鼻先に漂ってきました。あたりを見渡したけれど、樹木は見当たりませんでした。肌に触れるひんやりとした大気の感触で、「ああー、この季節感、やっと味わうことができた」と思わず両手を空に向かって大きく広げて、思いっきり空気を吸い込みました。
 すると、爆音が響き渡り、不安が過ぎります。道行く人が立ち止まって空を見上げ、扉を開けて家の外に出て様子を窺う人もいます。爆音はだんだん近づいて、上空をヘリコプターが三機悠々と飛び去っていきます。
 皆、今日の騒がしい状況に敏感になっています。何事もなく季節の変化を楽しむ穏やかな日常になりますようにと祈らずにはおれません。