妻同行の歯医者、そして買い物行

 十二月十四日(月曜日)、予報によれば今週には寒気が訪れるという。冬季という時節柄、慌てることはないけれど、これまで暖かい日が続いていただけに、寒気に身構えるところはある。いやいや、予報どおりに寒気が訪れれば、きわめてつらい週となる。
 確かに、冬季にあっては、いつまでも暖かい日が続くはずはない。しかしながら欲深い私は、のほほんとしてなおそれを欲張っていた。とりもなおさずわが身体は、暖かさに慣れきっていた。そのため、思いがけない寒気の訪れには慌てふためいている。加えて、きょうの私には予約済みの歯医者通いがある。ところがこれには、先週から妻を連れ立っている。妻は、単なるわが付き添い役や介添え役ではない。妻自身もまた、私の次にひかえる患者である。早い話わが夫婦は、ほぼ同時間帯に予約を入れられた、M歯科医院(鎌倉市大船)の患者なのである。
 私同様に妻もまた、従来のS歯科医院(横浜市栄区)から鞍替えしたのである。もちろんこの鞍替えは、S歯科医院の技術を見限ったからではなく、この先の加齢をおもんぱかり、余儀なくしたものである。実際のところ鞍替えの理由はただ一つ、通院行程の不便によるものだった。S歯科医院の場合は、路線バスを降りて速足で、二十分強の徒歩を強いられていたのである。ところが、鞍替えしたM歯科医院の場合は、バスを降りて待合室の長椅子に腰を下ろすまでも二分足らずである。そのうえ、M歯科医院の技術は、卓球クラブの先輩の折り紙付きでもあった。
 M歯科医院へ先行していたわが感想では、通い易さとそして技術共に、十分納得できるものだった。そのためこんどは、私が妻をM歯科医院へ誘導する羽目となったのである。ところが幸いなるかな! 先週の初回のおりの妻もまた、私同様にM歯科医院への鞍替えに十分納得していたのである。妻同行の歯医者通いは、きょうで二週目である。もちろん歯医者通いとなれば、ありがたい同行ではなく、やむにやまれぬ同行である。私の場合はきょうで七週目であり、おのずから治療の打ち上げは、私のほうが早いはずである。しかし、家計からしたらこの先、延々と続くお金(治療費)の持ち出しとなる。妻の治療を待って、二人分の支払いを済ますのは私である。そしてその先には、ついでの二人しての買い物行となりそうである。
 すると気になるのはやはり、新型コロナウイルス禍にあっての感染恐怖である。妻にかぎらず主婦の買い物は財布をあずかるせいか、買い物時間はかたわらで待ち飽きるほどに、品定めが馬鹿丁寧である。普段にあっても妻同行の買い物にあっては、私は「早くして! 速く買って!」の連発である。ところが、新型コロナウイルス禍にあって、買い物客まみれの中での長居には、感染に慄(おのの)くばかりである。
 きょうの妻同行の歯医者通いとそれに続く買い物行には、わがひとりのときとは違って、二倍の感染脅威に晒されることとなる。二人そろっての予約時間は午前十時である。もとより、二人分の医療費はわがなけなしの財布(お金)からのお出ましである。きょうの私は寒気の訪れとともに、オチオチしておれない年の瀬の半ばにある。