才谷 次呂著
著者は沖縄本島に生まれ、復帰の翌々年に絵かきになるべく上京した。独学で描きながら、沖縄で育った少年時代の中からテーマを見つけ、今回初めてその作品を詩画集にまとめ発表した。
どこで生きても/血は濁り/息を吐けば/針になる/汚れを嫌って/汚れるよりも/いっそこのまま/身を横たえて/海亀は/血の色の/島になる/(島童子より)
どこまでも澄みきった大海原に向かって立っている家々の素朴なたたずまいの中で「島」の少年は、昼は太陽の下で走りまわり、夜は島独特の神秘の世界に心引かれ、特に月夜の砂浜は少年にとってはインスピレーションの宝庫であった。
月の輝く海原に向って、少年の想像の世界は果てしなく広がって行く。やがて少年は「月の果実」を捜して、未知の世界に舟を出し、試練の旅に出発する。
少年の頃の体験は上京してからも著者の心に「原風景」となって度々よみがえり、生きる原動力になっている。どこで生活しようと、見上げる月を通して、少年の日の過去は、神秘の世界の詩や絵となって現在に生まれてくる。
沖縄の「島」が育てた著者の感性は、見事にこの作品群となって結実した。
見ない見ないよ洞窟を/怖い怖いよポッカリが/だけど豊作祈る時/みんなみんな そこに行く/だけど戦争あった時/みんなみんな そこに行く
(島童子より)(自費出版ジャーナル第21号)