現代寓話集Ⅱ海洋ファンタジー

現代寓話集Ⅱ海洋ファンタジー

 著者は学生時代漱石、芥川、カミュ、三島由紀夫などの作品を乱読する。一九七一年東京医科歯科大学医学部に入学するが、ランボー詩集に触発され詩作を開始し、翌年同大学を中退。その後詩作、読書、美術、音楽等に没頭し数年が経過するが、その間再受験し、一九七七年信州大学医学部に入学。一九八三年同大学を卒業し、会田記念病院、白井聖仁会病院に勤務する傍ら、小説、戯曲の執筆活動を続ける。写真、俳句、和歌、パソコンと趣味の域を越え、著作も中編小説「あらし」、「詩・和歌・俳諧」、「ULO」、「コメディー・ジャポネーズ」、「戯曲集」、「現代寓話集」と多種多彩。一九八五年から執筆開始の大河物語「世界」は、第四編までを二冊の単行本にまとめ、今後第五、第六編を執筆の予定。
 以上が著者のプロフィールであるが、昨年病院を退職し、グルノーブル大学短期留学、ピースボートによる地球一周の旅に出て帰国後、今回の「現代寓話集Ⅱ」を執筆し、出版となった。
 収録作品は、『船幽霊』『ブラックオパール』『漂流』『イルカ』そして掌編『反逆』『ピストル』である。いづれも太平洋、アラビア海、タヒチ島等、周航の思い出がちりばめられている。その素材、発想が個性的で新鮮である。
 カサコソカサコソと、枯れ葉が風に揺すられるような音がした。……略……突然、デッキの隅が薄明るくなった。相手はそこにいた。……略……背丈は40㎝くらい、紙のように薄く、枯れ葉のようにカサカサとしていた。
 「貧相なやつ…」
 思わず口走った。と、相手はカサカサと笑った。妙に神経に障る不思議な笑い声だった。それからひらりと飛んで、すぐ近くに立った。
 「幽霊か?」
 と尋ねると、「ソウダ」と答えた。
 ……略……
 「だが、どうしてわざわざ俺の前に現れた?乗客は何百人もいるというのに…」
 「オマエガイチバン感ヅイテイタカラサ。ジブンジシンノ無意味サヲ。ソレハミゴトナモノデ、事ニヨッタラコノ二十年間デオマエガイチバンカモシレナイ」(船幽霊より)(自費出版ジャーナル第24号)