「みどりの日」(五月四日・水曜日)。朝寝坊にも思わぬ「福」がある。駄弁や駄文は要しない。慌てて起き出して、窓ガラスを覆うカーテンを開いた。日光(朝日)と山が織り成すコラボレーション(共演)を享けて、わが目に緑が眩しく映える。自然界が恵む風景は、もったいないほどの贅沢三昧である。まさしく、自然界が人間界に授ける無償の恩恵である。人間界も、恩知らずではない。恩恵に呼応し、きょう一日を「みどりの日」と名付けて、この風景を賛歌している。これだけで、国民祝祭日としての制定意義は十分にある。もちろんこの恩恵を享けて、人様が近場の物見遊山や行楽、あるいは遠出の遊楽や内外の旅行に酔いしれても、私には一切、恨みつらみはない。正直にあえて、わが心境を吐露すれば、わずかばかりの羨望のみである。それでも妬ましさなどは微塵もなく、私はひたすら往復の無事を祈っている。ただ、朝寝坊で難儀することは、時計の針に急かされて、尻切れトンボのままに文を閉じ、妻が待つ茶の間と、台所へ急がねばならぬことである。こんなでも、みどりの日の私は、幸福である。