睡眠中に地震に襲われた。「助けてくれー」、と叫んでも、神仏は助けるはずもない。身を縮めて、揺れの収まりを待った。命の鼓動を確かめてみる。平常に動いている。八十一歳まで生き延びてきたことは、途轍もなく幸運・果報者なのかもしれない。ただ、その実感が乏しいことは残念無念である。やおら身を正して、生存のありがたさをかみしめてみる。「バカは死ななきゃ治らない」。「バカでも、まだ生きていたい!」。地震に見舞われるたびに、「ピンピンコロリ」を願う、不断の心模様は、あっさり遠のいている。たぶん、私のみならず人間は、一様に浅ましさの権化である。