二月十日、降雪予報

 夜明け前の暗闇にあって、起き出して来るや否や、窓ガラスに掛かる布とレースの二重ねのカーテンを開いた。おおっ、手の甲に雨粒が当たった。すばやく、手を引っ込めた。一基の外灯が照らす、道路に目を凝らした。まだ、雪は降っていない。寒気を表す体感温度も、格別下がってはいない。
 きょう(二月十日・木曜日)は、今週初めあたりから出ている降雪予報にある。降雪予報は、ライフラインをはじめ数々の警戒警報を伴っている。わが身に限ればさしずめ、玄関、門扉、その周辺の道路の雪かきや外出時における、転倒への警戒警報と心している。
 第六波の新型コロナウイルスの感染恐怖のさ中にあって、このところの私は、意識して外出行動を控えている。ところが、降雪予報と日を一にしてきょうには、余儀ない外出予定がある。それは、三回目のワクチン接種日である。もちろんこちらは、降雪予報より一月ほども早く、行政(鎌倉市)から手際よく伝えられている。すなわち、日時、場所(会場)、さまざまな手引書および注意事項、加えて往復の無料タクシー券の同封など一切である。これらのことできょうに限り、一番ありがたく思えるのは、肝心要の接種を差し置いて、タクシー券と言えそうである。本末転倒に思えて、恐縮しきりだけれど、あいにく降雪予報が重なっては、身に沁みて行政の粋な計らいに感謝しきりである。
 せっかくの粋な計らいにあって、乗り降りのときに転げてはみもふたもない。わが指定時間は、午前十一時である。雪の降り出しの時は、自然界のことゆえに知るよしない。だから、ちょっとだけ気になるのは、降雪が指定時間より早ければ、タクシーを呼んで時間どおりに来るかどうかである。ただ、幸いなるかな! 降雪や積雪予報は人為とは異なり、ときには大外れになる場合がある。夜明けの空は雨模様で、いまだ雪模様には見えない。雪はいつ(何時頃)、降り出すのか、昼過ぎなのか、夕方なのか、降ってもみぞれ程度なのか、それとも降らないのか。あす(建国記念日)へ、先延ばしか。氷雨とは言えない雨模様のせいで、ちょっぴり寒気が緩んでいるのは、余儀ない外出には勿怪の幸いである。