立春が過ぎて、確かに春は来ている。半面、立春が過ぎたばかりなのだから、まだ冬とも言っていいだろう。むしろこのほうが、感覚的にはぴったりする。
この冬、すなわち令和四年のこの冬は、飛びっきりの寒さに見舞われている。日々、伝えられてくる北の地方や雪国の降雪や積雪模様には、私はそのたびに度肝を抜かされている。心情的には、届かぬ「雪見舞い」に大わらわである。いや、確かに他人事ではなく、私自身日々ブルブルと震えている。しかし、季節は春に向かっている。夜明けは早くなり、目に見えてかつ体感的にも夕暮れは遅くなっている。季節のめぐりはすっかり、日長傾向を極めている。つれて、寒の底は脱しつつあり、「一陽来復」の気分横溢である。それでも私は、茶の間に張り付いている。ところが、窓ガラスを通して見る散歩めぐりの人の数は日に日に増えて、しかものどかな足取りである。すなわち他人は、寒さを蹴散らして春の訪れを楽しんでいる。寒がり屋の私だけは、なおカタツムリ同然のままである。椿の花に飛んでくるメジロも、春を楽しんでいる。
寝起きの十分間の文章は、形を成さない。それでも書いたかぎり、無題では済まされない。いくぶん、心がウキウキしているから、「一陽来復」でいいだろう。