立春

 寒気を遠のけて、よちよち歩きの春が来た。それでも、確かな春の足音である。庭中の梅の木の蕾は、ほのかに綻びはじめている。同時に願っていたわが家の春は、いまだ蕾にはなりきれず、それ欲しさにせっせと途中を歩いている。しかし、いっときの暗闇は抜けて、ほんのりと出口の明るさが見え始めている。
 人生は「万事、塞翁が馬」。このところの私は、いつものマイナス思考をかなぐり捨てたかのように、やけに達観を決め込んでいる。この心境、もちろん悪いことではない。遅まきながら、世渡りの術を悟り、学んでいる。寝起きの気分は悪くない。
 立春、心地よい言葉である。一年の「春夏秋冬」のスタートにあって、やはり私は、欲深くわが家の春を願っている。「来い、来い」。