きのう(十一月十一日・木曜日)は、義父と義母の合わせ法事(回忌)に出向いた。共に、永別の日から長い歳月が過ぎていた。それぞれを偲ぶ和みはあった。一方では、悲しさがぶり返した。菩提寺は鎌倉市に連なる逗子市に隣接する、神奈川県三浦郡葉山町に存在する「新善光寺」である。寺は由緒ある大伽藍を構えている。義父母の墓は境内の一角にある。催事の主は、義父母の後継をなす義姉と義兄(逗子市)である。これに、わが夫婦と娘夫婦が加わった。読経を唱えるご住職の後方には、六人が間隔をとり、椅子に座り並んだ。静寂きわまる大伽藍の大広間にあって、法要はきわめて厳粛に行われた。このあとには出来立てほやほやの卒塔婆(そとば)を手に取り、墓地の石塔の前に出向いた。ご住職はここでも、短く読経を唱えられた。読経の下、六人は入れ替わり、厳かに合掌した。みはるかすほどに広い境内と、それを抱え込む後背の小高い山には、黄葉や紅葉が照り輝いていた。法事は、しめやかに閉じた。
ところが、出かける前の私には、飛んでもない異変が起きていた。首周りは、絞首刑さながらにきつく締めつけられていた。身体は、ワイシャツと喪服にぎゅうぎゅう詰めにされていた。さらには、思い及ばぬ難儀に見舞われた。ネクタイは、喪服に合わせて黒色を選んだ。最大の異変は、このときである。私は、ネクタイの結び方を忘れてしまっていた。このことには、かぎりないショックを受けた。結局、正規にはなり得ず、ちょろまかして結んだ。とても悲しかった。