一年の季節のめぐりは、春・夏・秋・冬と分けられる。四区分は、総じて四季と称される。それぞれには経過に応じて、おおむね「初・中・晩」という、言葉(文字)が添えられる。おおむねと記したのは「初」にかえて、「早」という言葉が用いられるゆえである。たとえば「初春」にかえて、「早春」と言う場合がある。しかし、三区分の呼称では決まって、初春が常態化している。人は季節のめぐりに応じて、それぞれの感慨を懐(いだ)いている。感慨にはずばり、好き嫌いという感情がまとわりつく。
私の場合、四季にあっては冬が最も嫌いである。その理由は、冬は寒い季節だからである。なんだか、赤ちゃんじみた理由である。炬燵(こたつ)の上で丸くなる、「猫」の気分丸出しでもある。ところがきょうは、冬の入り口すなわち「立冬」(十一月七日・日曜日)である。
このところの私は文章において、やたらと「晩秋」と書いてきた。もちろん、わが好きな季節ゆえである。その証しには晩秋にたいし、惜別とか賛歌という、わが感情のほとばしりの言葉を添えた。ところがきょうは、どんでんがえしに立冬である。言葉をかえれば、わが嫌う冬の季節の初日である。もちろん、立冬のせいではないはずだが、早や風邪をひいたようだ。現在、やたらとくしゃみの連発に見舞われている。さっき、風邪薬をのんだ。
晩秋とは心地良い言葉である。惜しんで、「晩冬」と書くことはとうていあり得ない。きのうとはうってかわって、どんよりとした冬空の夜明けが訪れている。