タイガース、奮戦

 十月十日(日曜日)、今シーズン初めて、プロ野球のことを書いている。残りの試合数は、どの球団も十試合余りである。こんななか、わがファンとする阪神タイガースの優勝はほぼなく、二位確定で今シーズンを終えそうである。前半戦の好成績を見るかぎり、優勝を確信するときがあった。しかし、結局叶わず、尻切れトンボの憂き目にあっている。いや、尻切れトンボと言うには忍びなく、善戦という戦いは続けてきた。それでも優勝が遠のいたのは後半戦に入り、東京ヤクルトスワローズの快進撃のあおりを食っているせいである。優勝をほぼ手中に収めたスワローズは、憎たらしいというより賞賛すべきあっぱれな戦いぶりである。
 これに引き替えて、常勝球団を自任する読売ジャイアンツのこのところの急失速ぶりには、(なんでだろう)、と疑念たらたらのところがある。ジャイアンツは長年、「目の上のたん瘤(こぶ)」、いや悪性腫瘍とも思えるタイガースの宿敵である。だからと言って私は、ジャイアンツの失速ぶりを悦ぶほど、バカでも狭量でもない。むしろ現在は、「汝(なんじ)の敵を愛せよ」という、誇り高い心境にある。
 確かに、例年であればジャイアンツの強さは、ただ憎たらしいばかりである。しかしながら今シーズンにかぎれば、いっとき「同病、相哀れむ」の心境をたずさえている。残り試合にあってジャイアンツの奮起を促し三位にとどまり、共にクライマックスシリーズへの戦いを望むところである。書くネタなく目覚めて、こんなことを心中に浮かべていた。
 あす(十月十一日・月曜日)には、今年のドラフト(新人選択会議)が予定されている。有望選手を早々とジャイアンツに横取りされては、こんな殊勝な心持は消え去り、たちまち憎たらしい思いの復活となる。もちろん、「敵に塩を送る」心境など、雲散霧消である。文末にあって本音を書けばジャイアンツこけて、スワローズの優勝は快い気分である。それは、タイガースの優勝を凌ぐ快さでもある。やはり私は、「箸にも棒にもかからない」、狭量すなわちせこい人間である。
 かつての「体育の日」は、運動会日和の穏やかな夜明けである。時節はコロナも収まり、後れてきた秋たけなわのさ中にある。「嗚呼、めでたい」。タイガースこけて、かなり嘘っぱちの心境である。しかし、ジャイアンツを浮かべて、泣いてはいない。表題には「タイガース、奮戦」と、決めよう。