音程を外しわが生涯において双璧を成し、歌い続けてきた愛唱歌を口ずさんでいる。『誰か故郷を想わざる』(歌:霧島昇 西條八十作詞・古賀政男作曲。わが生誕年・昭和十五年の発表曲)。花摘む野辺に 日は落ちて みんなで肩を 組みながら 唄をうたった 帰りみち 幼馴染のあの友この友 ああ誰か故郷を 想わざる ひとりの姉が 嫁ぐ夜に 小川の岸で さみしさに 泣いた涙の なつかしさ 幼馴染の あの山この川 ああ誰か故郷を 想わざる 都に雨の 降る夜は 涙に胸も しめりがち 遠く呼ぶのは 誰の声 幼馴染の あの夢この夢 ああ誰か故郷を 想わざる。
『人生の並木路』(歌:ディック・ミネ 作詞:佐藤惣之助 作曲:古賀政男)。泣くな妹よ 妹よ泣くな 泣けば幼い 二人して 故郷を捨てた 甲斐がない 遠い淋しい 日暮れの道で 泣いて叱った 兄さんの 涙の声を 忘れたか 雪も降れ降れ 夜路の果ても やがて輝く あけぼのに 我が世の春は きっと来る 生きて行こうよ 希望に燃えて 愛の口笛 高らかに この人生の 並木路。
二曲目は哀唱歌となり、しだいに涙があふれて、歌いきることはできなかった。