二月十八日(木曜日)、パソコン上のデジタル時刻は現在、2:43と刻まれている。今のところは、窓の外に望まない雪景色を見ずに済んでいる。しかしながら部屋の中は冷え冷えとして、わが現在の体感温度は、とうに過ぎた「大寒」(一月二十日)の頃を凌ぐ低さである。そのためわが心情は、走り書きを加速させて、階下の暖房装置のある茶の間へ逃げ込みたい思い満杯である。熾烈な寒さの証しには、わが身体はブルブルと震えている。
極度に寒気をおぼえていることには、わが失態も加わっている。すなわち、このところの私は、すでに冬防寒重装備を外していた。きょうの予報をかんがみれば、とんだしくじりである。予報によればきょうは、日本列島はあまねく降雪予報にある。日本列島の南の地方わがふるさと県・熊本県でさえ、予報によれば積雪の高さは半端ない。いまだに二月半ば過ぎの降雪予報だから、予報がピタリと当たったとしても、名残雪とは言えそうにない。強いて言えば、冬の出口から春へ向かう季節にあって、人々に春が持て囃されていることにたいする、冬のやっかみであろう。自然界の季節替わりにあって、人間界は飛んだとばっちりをこうむっている。このためきょうは、自然界賛歌はお蔵入りである。
逆にきょうの私は、普段は滅多にお目にかかれない、人間界賛歌の一つを誇らしげに記して置きたい思いに駆られている。もちろん、他力本願すなわち人類のなかで、飛びっきりの知恵者のおかげでる。きのう(二月十七日・水曜日)から日本の国にあっては、先行接種という掛け声の下、新型コロナウイルスに抗するワクチン接種が開始された。接種の様子を見るかぎり、きわめて順調な船出である。それらの一つは、注射針の痛みもそうなく、さらにはおおむね懸念されていた副反応もないようである。まさしく、この先へ期待あふれる、「めでたし、めでたし」の船出である。これにちなむ人間界賛歌は、ずばり人間の知恵と知能の素晴らしさである。
実際のところは一年にも満たないスピードで人類は、新型コロナウイルス向けのワクチンを研究開発し、大量の工場生産を叶えて、世界の国々および人々への接種へ漕ぎつけたのである。まさしく、「無から有」を成し遂げた人類の快挙である。これに応えて私は、接種の順番がくればさまざまな懸念を払拭(ふっしょく)し恐れず、右肩脱いで注射針を差し込んでもらうつもりでいる。自然界は間髪を容(い)れずに、恐ろしさ(脅威)を見舞ってくる。ところが、このたびの人間界の快挙は、同音異義の驚異である。
三十分強の走り書きで茶の間へ逃げ込むのは、自然界の悪戯(いたずら)のせいである。私は茶の間でしばし、人間界のほどこしの温もりに浸りたい。嗚呼、心地良い人間界賛歌である。