世界中に恐怖にとどまらず夥(おびただ)しい数の感染者数と死者をもたらし続けてきた新型コロナウイルスは、このところようやく感染の勢いを緩めつつある。もちろん、この上ない朗報である。
日本の国にあっては、さしものの新型コロナウイルスも難敵・ワクチンの接種に怯えてなのか? 接種開始を前にして急激に感染者数を減らし始めている。日本の国にあっては優先順位をつけて、今週末あたりから待ち焦がれていたワクチン接種が始まるという。感染者数の減少傾向に加えて、ワクチン接種が重なれば、一気呵成に新型コロナウイルスという、鬼退治が果たせるかもしれない。魔界の異物には、人類の知恵で対抗するにかぎる証しである。
現在の私は、人類の知恵の効き目に胸ワクワク感をぬぐえない。もちろん、うれしい悲鳴であり、欲張って効果覿面を願うところである。一方で、ワクチン接種が国民に行き渡らない前に感染が終息に向かえば、おのずからワクチンの存在価値が色褪せる羽目ともなる。実際にもワクチン接種を拒む人たちが増えて、挙句、ワクチン自体が使用されずに無用の長物ともなりかねない。実際のところは、そうなれば万々歳のはずである。しかしながらそうなれば一方、日本政府は無駄な買い物をしたと、非難を浴びるかもしれない。もちろんワクチンは、買い置きの防災用具とは異なり、直接的に命の消滅を防ぐ、鬼に金棒である。
日本国民いや人類は、どんなにかワクチン開発に希望を託してきたことだろう。それでも、ワクチンの余り現象が起きたら、「日本政府の無駄遣い」と、嘯(うそぶ)く人は必ずいる。新型コロナウイルスとの戦いにかぎれば、「うれしい誤算」、と寛容の精神が望まれるところである。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」。人類の浅ましさは見たくない。いやいや、新型コロナウイルスとの戦いにあっては、真っ平御免こうむりたいものである。
のどかな春の訪れを願う、二月半ば(十六日・火曜日)の夜明け前にある。もちろん、地震の恐怖も真っ平御免である。