春の陽光

 3月28日(木曜日)。寒くも暑くもない、ようやく春の季節に違わぬ夜明けが訪れている。欲張って願うところは、眩しい朝日の輝きである。しかし、願いは背(そむ)かれて、どんよりとした曇り空である。ゆえに、わが寝起きの気分はどんよりとくすんでいる。体調不良に加えて、寝ぼけまなこのせいでもある。
 昨夜の就寝はいつもより遅く、それなのに一度目覚めればいつものように二度寝にありつけず、悶々と時を流した。きのうの食事会には、わが夫婦、娘と孫、そして逗子に住む義姉が集った。食事会の場所を恵んだ「逗子の海」端のファミレスは、若い人たち、中年客で、混雑を極めていた。しかしながら私たちは、娘が予約を入れていたために、待ち並ぶ客に後ろめたさをおぼえながらも、予約席へすんなりと陣取った。窓ガラスを通して、かつて海水浴に遊び興じた逗子の海は、前日の雨を忘れ去ったかのように、海面広くピカピカに光っていた。
 予約時間は午後1時だった。ところが、逗子駅で待ち合わせて、娘の運転で向かう道路もまた、長い帯のごとく渋滞を極めていた。久々の春の陽光が海岸通りに多くの人出を誘っていたのである。陽光ひとつで人の気分は、こんなにも変わるものかと、私は進まぬ車内で実感していた。食事会を楽しく終えると途中、義姉を自宅付近に降ろして、私たちはわが家のある大船(鎌倉市)へ向かった。ところが、すんなりとわが家へは着かずに、わが提案で初入りのカラオケ店へ赴いた。もとより音痴で、私にはカラオケ店など要なしである。ところが、妻と子・孫への愛情はある。3人とも飛びっきり歌、そしてその晴れやかな舞台をなす、カラオケ店が大好きである。逗子の街から鎌倉の街、さらに大船への戻り道にもまた、長い渋滞に遭遇した。この間には「鶴岡八幡宮」にからんで、渋滞を極める道路(鎌倉街道)がある。食事会の予約、カラオケ店の時間設定、いずれも勝手知っている娘の主導であった。私の役目は、どちらも財布を開くだけである。娘はカラオケ店で、こちらは勝手に「三時間」と、受付係に告げていた。終わり時間を告げるブザーは、九時近くに鳴った。孫はどの曲も95点を超える点数、娘は90点を超える点数、妻はその前後の点数、私は3曲歌ったけれど、80点ほどの点数だった。
 カラオケ店を終えて、9時半近くにわが家へ戻り着いた。娘の車はわが夫婦を門口へ降ろすと、横須賀市内の自宅へ向かった。無事到着の知らせは、約一時間ののちに届いた。こののちの私は、何年かぶりに歌を歌ったせいなのか興奮冷めやらず、いたずらに茶の間で時を過ごした。これが祟り挙句、いつもとは違って就寝が遅れたのである。
 寝起きの私は、走り書き、そして書き殴りの馬鹿な文章を書いてしまった。書かなければよかった。自業自得とはいえ、このところのカウント数値は漸減傾向ある。表題のつけようはないけれど、継続文にしなければもったいない。文章がいつもより遅くなったのは途中指先を休めて、NHKBSテレビ二つの朝のドラマ、『萬平さん』と『ブギウギ』を観るために、焦って茶の間へ駆け降りたためである。
 時がたって、どんよりとしていた雲間から、春の陽光が輝き始めている。