味噌造り

 今年も無事味噌造りを終えた。新年明けて早々に、妹と味噌造りの予定日を約束した。味噌造りの期限は大寒(一月二十日)までに終えると母から伝え聞いていたので、毎年出来るだけそのようにしていた。今年は十四日決めた。前の日から妹は我が家に泊まり込みでやってきた。午前十一時に和光市駅で待ち合わせて近くのマーケットで材料を買い求めた。大豆五百グラム入り五袋(二千五百グラム)、米糀二百グラム入り十二袋(二千四百グラム)、粗塩一袋(一キロ)である。
 朝五時に起床して、六時二十五分のテレビ体操を済ませ、朝食を食べて、八時から作業開始した。前夜に大豆を洗って、六百グラムずつ入れ物に分け、豆の二倍の水千二百リットルにつけておいたのを圧力鍋で四回にる。
 圧力鍋の使い方を説明書を読んでしっかりと頭に刻み込む。いい加減にやると作業が手こずるからだ。慎重にやっても毎年何だかのトラブルが起きてしまう。
「さあ、始めるよ」とかけ声をかけ、圧力鍋をコンロにかける。最初は強火で鍋の重りがシュウシュウ音を立てて回り出したら、火を弱めて五分そのままにする。
 妹が用心深く時計を見て記録している。さすがわが妹、気が利く。このように頼りになるのである。
 一回目は、鍋の音を聞いた妹のかけ声でコンロのそばに行くと、重りが勢いよく回っていたので火を弱めた。
 五分経って火を止め十五分の蒸らしに入る。妹はしっかりと出来上がる時間を記録する。この間に飯台で糀六百グラムを崩して粗塩二百四十グラムとよく混ぜておく。
 十五分経って豆はふっくらと良い具合に出来上がった。豆の煮汁(種水)は別の容器に移しておく。煮上がった豆をミンチで潰す。潰した豆を糀と塩を混ぜた飯台に移し、種水を散らしながらよく混ぜる。これで一回目は終了し、保存用の瓶に入れて、しっかりと上から空気が入らないように押さえておく。
 二回目を始めたとき、鍋がシューシュー音を立てたとき、妹の「鳴ってるよ」のかけ声に私は急いで立ち上がり圧力鍋に近寄った。シューシューと音を立てていたが重りが回っていない。少し待ってみたが音を立てているけれど重りは少し回って止まりを繰り返している。私は圧力鍋の料理は苦手だ。というのも、圧力をかけ過ぎて爆発するのではないかと恐れていた。だから出来ることなら使いたくないのだった。
 私はコンロの前で恐る恐る鍋の重りの様子を見ていたが、我慢できずに火を止めてしまった。
 出来上がった豆は固めだった。いざミンチにかけると、ハンドルが回りにくい。しまいには力を入れても回らなくなった。思案のしどころである。すり鉢を試してみた。とても潰しきれない。ミキサーを使ってみた。ミキサーには材料に水を加えなくてはならない。種水は分量どうりにしか取れない。かといって余分に水を加えるのは残念である。飯台で潰した豆と混ぜ合わせるときの種水は加えないことにして、ミキサーに煮豆と種水をいれて、どうにか潰した。
 三回目の時、重りがくるくる回る段階を用心深くながめた。とはいうものの重りが回るのを確かめている間、怖くて近寄れなかった。微かに回りそうになり止まりを繰り返す間、恐る恐る離れてみていた。
 そんなわけで、今回もトラブルがあったけれど、どうにか十一時に終了した。次回には今回の教訓を生かしてと思うけれど、一年後では記憶が薄れているかもしれない。圧力鍋を使いこなせば良いのだが、やっぱり怖いのである。
 味噌が出来上がるのは半年の熟成を待つことになる。
 ちなみに昨年造った味噌は、まだ少し残っているが、新しい味噌が出来上がるまでにはなくなっているだろう。