リサイクル機構をいかに社会に確立するかについて

 現在、今もっての日本は長い不況に喘いでいるが、それでも人々は依然として、かつての好景気の時の大量生産による、物が有り余った生活の中にいる。まだ十分に使用出来る物がゴミとして焼却され、その過程で発生したガスで大気が汚染されたり、粗大ゴミとしての家具類や電気製品等が野原や山林に不法投棄され、かつ、野放しにされ、挙げ句の果てに錆びたり、ハエや蚊の発生の温床になったりしている。
 このように、一度使用された物で、もう一度他人に渡れば価値がある物が破棄され、かつ環境をも脅かしている現実を解決するには、それらの物を再利用、活用するリサイクル事業が確立した経済機構を社会に作らなければならない。
 そこで以下に於いて、リサイクルを社会に根付かせるにはどうしたらよいかについて、小さな視点からは、再利用できうるリサイクル資源をいくつかの品目に分類した上で、どう加工、修繕でき、また販売できるかについて述べ、さらに大きな視点からは、リサイクルを社会機構として確立するには、官民でどのような努力が必要かを論じてみたい。
 先ず、一番身近な物でリサイクルしやすいものはガラス製の酒類のビンである。これまではゴミとして回収され、その後機械で砕かれ、ガラス製品を再生する原料としてリサイクルされていた。
 この方法だと労働力等のコストがかかり過ぎるようだ。このコストを省くには、すべての洋酒メーカーに清掃局に回収された自社製のウイスキーやブランデー及び日本酒などの空ビンを丸ごと無償か、少し手数料を払って引き取ってもらい再利用してもらうのが望ましい。これまではビールビンだけは試みられていたが、その他のビンもそうされるべきであろう。
 同様に、ペットボトルやガラス製のインスタントコーヒーの容器などもそのような方法で回収し、フタを変えて新たな製品に再利用すればよいと思われる。生産の回転も効率的に早くなる。缶ジュースなどはプルトップが取れても、缶を回収し、金属テープを貼れば使えるであろう。
 発泡スチロールやプラスチック類は石油に還元する技術が望まれ、回収して利用されるべきである。また木材で家を取り壊した廃材は回収して焼却せず、紙の原料として使ってほしい。古タイヤは積極的に輸出すべきだ。
 次に、大企業で使われていた設備機械は、これまでのように解体業者に渡り解体されるのではなく、中小零細企業に仲介し、廉価で譲るべきである。
 小さな企業は新品では何億もするので買えないが、まだ稼働する設備機械を安価で譲渡されれば中小企業の産業育成、特に地方の振興に役立つ。医療機械、例えばレントゲン等のものは、これまで同様、病院の勤務医から開業する医師の設備機器として安価で譲渡すべきであるし、特に、山村などの診療所に譲れば地域医療の改善にも役立つ。海外、特にアジア、アフリカの諸国の病院等に安価で譲れば国際医療開発援助になろう。
 次に大局的に官庁主導でリサイクル事業を築きあげる方法については次の通りである。まず国家機関でリサイクル事業が出来るのは刑務所である。各清掃局で回収された電気製品や家具類を刑務所で引き取り、修理技術を身に付けた受刑者が修理し、その修理したものを模範囚の生活や刑務所でまず使う。さらに学校、大学や福祉施設や生活保護者に優先して利用してもらえば良いと思う。廉価で販売して引き取ってもらうのだ。
 さらに品物が余れば刑務所内に各地域の自治体の援助で第三セクター方式の販売所を設立し、修理したリサイクル品を一般の人々に安価で販売するとなお良い。職員は刑を終えた受刑者を雇用すれば、再生事業にも寄与することができる。そうすれば、刑を終えた受刑者が出所する時の収入アップにもなる。
 次に民間のリサイクル業者の育成を自治体がいかなる方法で助成できるかについて論じたい。
 発泡スチロールやプラスチック等は、原料であった石油系オイルに還元可能である。もしそのようなものを開発できる技術を持っている企業が採算が取れず、赤字になって事業として成り立たないならば、国や自治体は財政援助して利潤が出る分まで助成すべきである。
 また国や自治体のリサイクル企業育成は不況による失業対策にも役立つ。不況やリストラで職を失った人々を一時的に雇用する企業として、自治体が財政援助した第三セクターのリサイクル企業を設立するのである。
 さらに、この種のリサイクル事業は福祉にも役立つ。福祉施設で作業所や福祉授産所に自治体が財政助成し、電気店や清掃局で下取りや回収された電気製品を引き取り、心身障害者のリハビリや就労として修理する技術修得に役立て、修理されたリサイクル製品は生活保護者や老人ホームのお年寄に優先して分け与えるのが好ましい。またそれを売った代金は、障害者の収入として還元するのも方法である。
 以上の方法でやればリサイクル事業はしっかりと社会に新経済システムとして根付く。               

(流星群だより27号に掲載)