9月26日(火曜日)、寝坊助に陥り、慌てて起き出して来ました。そのため、文章を書く心の余裕を失くしています。おそらく、尻切れトンボの結び文になること請け合いです。
ふるさとの「内田川」の川岸、そして稲田や田園などには、赤とんぼが飛び交っているはずです。もはや、ふるさと帰りもままならず、心中に浮かぶ懐かしく、中秋の美しい情景です。
きのうは、予約済の歯医者へ出向きました。通院始めから長い日が経って、今回で最後の通院となりました。きのうの通院にあっては、あらかじめ新しい入れ歯の出来上がりが伝えられていました。このことではいつもとは違って、私はうれしい心の膨らみをたずさえ、待合室のソファに腰を下ろしました。予約時間は午前十時、ほぼ十分前に待合室に着いていました。いつもの待合室は人影を見ないのに、きのうは二人が診察室から待合室へ出てこられました。私は保険証と診察券を添えて、受付の窓口へ置きました。すぐに、診察室のドアが開いて、お顔馴染みの若い女性の歯科衛生士さんが、「前田さん」と、呼ばれました。今や勝手知った診察室へ、それでも私は、神妙に導かれた診療椅子へ向かいました。三台ほど並んでいる診療椅子の二つは空いていてこのとき、診察室の患者は私だけでした。診察室特有の静まりに私は、緊張感をおぼえました。心して診療椅子に腰を下ろすと私は、いつもの習わしにしたがって、メガネ、マスク、そして片方だけ耳穴の集音器を外しました。集音器を片方だけにしたのは、先生のお話を聞くためと、一方では処置の邪魔にならないための私の配慮でした。傍らの紙コップで三度口すすぎを試み、主治医・男性先生の近づきを待ちました。まもなく先生が近づかれていよいよ、予定されている施療が始まりました。
「おはようございます。大世話様になります」
「きょうは、出来上がった入れ歯を入れます」
先生はすぐに、そして五回ほど嵌めたり、抜いたりの作業を繰り返しされました。ようやく新しい入れ歯は、元の歯並びに馴染んで定着しました。この間、そしてこの後の私は、新たな入れ歯の形を見ることもなく、もちろん大きさなど知らずじまいでした。しかしながら違和感はなく、入れ歯の成功を感得していました。
そして、今朝の洗面において初めて私は、入れ歯を指先で外し、手にしてじっと見ました。すると、新しい入れ歯は、ところどころがくびれて、両端には新たな入れ歯が林立し、まるで「恐竜の姿」を見るようでした。私は驚いて、パソコンを起ち上げ、この文章を書きました。30分間の程の書き殴り、そして予知の尻切れトンボの文章は、ここで結ぶ文になりました。
窓ガラスを網戸へ変えると、風の冷たさが身に沁みています。夜明けの大空は、秋天高い日本晴れです。