日本経済不況への誰も考えない奇策

 平成二十一年に麻生内閣が取った景気刺激対策は、アメリカのオバマ大統領がやった、環境問題すべてを対象とする解決目的とした、グリーン=ニューディール政策による経済対策、景気刺激政策を、ほんの一部をまねたエコ=プランであった。それは主として、長い不況で、製品が売れず、リストラ策を進めている、電気業界と自動車業界を救済するため、省エネ、電気を喰わない電気製品を買った者にポイントを与え、後に政府が税金で点数に合わせて、商品やサービスを与えるというものと、排気ガス等を出さないエコカーを買った時には減税や買うための補助をするというものだ。そして、太陽エネルギー利用による各家庭の屋根に取りつけるソーラー板購入を政府が補助金を出すというものだ。
 だが、これらの政府が行っている景気対策は片手落ちで、一時的には電気製品や自動車などを売り多少効果があろうが、長期に渡る効果は望めない。そこで、今、政府がまったく考えていない、経済対策についての良いアイディアを以下に於て述べてみたい。
 まず、政府が打ち出したソーラー発電板の取り付けに政府が補助し、個人が太陽発電を行い、消費分の余剰を将来、電力会社に買い取らせ、収入を上げる方法についてである。このソーラー発電の補助政策を、収入のある一般の人を対象とするのではなく、福祉優先に行うべきである。失業者、生活保護者、年金受給者で収入の少い人、老齢で収入の少い人、身体障害者、知的障害者の人々を優先的に税金で補助し、全額ソーラー板設備を提供し、発電した電気の内、個人で消費した電気の余剰を電気会社に買い取らせて収入を上げさせ、これらの働けない人、働きたくても働けない人を、働かなくても、ソーラー発電の設備補助で収入を上げさせ、働いたと同じ事にするやり方で、経済刺激をする方法である。障害者や貧困な老齢者、リストラなどの失業者の割合は人口の中でかなりの割合があるので、これらの人々の購買力を上げ、そこそこの景気刺激策となる。
 具体的には、年金生活や生活保護者、老齢で貧困な人については、家を持っている人やアパートに住んでいる人の屋根に全額的に国家が設備投資して、太陽エネルギー発電の自己消費分を引いた余剰電気を売り、収入を上げさせ、その中から政府が投資した分を少しずつ返してもらうのだ。身体障害者や知的障害者などは家族と一緒に住んでいる場合は前記と同じだが、福祉施設などに収容されたり、住んでいる場合は、その施設の庭や敷地などに共同のソーラー板の設備を国家が全面出資をして設置する。
 従来の介護ヘルパーや福祉ケアーは税金を福祉の業務に消費して終わりだが、太陽エネルギーのソーラー板設備への税金投入は、働けない障害者、貧困者などを、働いたと同じ形で多少収入を上げさせ、投入した税金を少しずつ回収することが良い。
 次に、不況下の日本でやるべき事は、家を災害などで失った人、派遣労働者で急に解雇された人、援助すべき、住宅問題についてである。災害にあった人、例えば阪神大震災の時や新潟大地震の時に、災害で家を壊され、失った人を救助する手段として、災害にあった土地を、残骸を取り払って広場にし、年数を限って仮設住宅に住まわしている。また、経済不況で、派遣切りにあったので、社宅を追い出され、ホームレスになった人に対し、政府や自治体は大きな公園に於て、テント村を作り、炊き出しをしたが、わずか一ヶ月で取り壊して、それ以後はまったく援助、救済をしていない。
 このような限られた年数、短期間しか行なわない自治体や国の援助に代って、導入すべき道は、アメリカに於て移動式住宅として普及しているモービル=ホーム(MOBILE HOME)、別名トレーラー=ハウスである。外見は普通の家であるが、土台(通常は木製)の四つの角のところに大きなタイヤが付いている。それを土地のある所に、トレーラー車やその他牽引できる車で移動する家である。従って、民法上は土地に付着していないので不動産ではなく動産である。
 この種の家は未だ日本では普及していないが、災害時に家を失った人や派遣切りで家を持たない人、ホームレスになった人に、政府や自治体が購入し、これらの人々に無償で提供し、永久に保持させるものだ。モービル=ホームは普通の家よりもずっと安価であり、一時的に政府援助金でモービル=ホームを与え、どこか別の土地を見つけ住むことになったらトレーラーなどで移動させる。そこで以後住むことになる。
 現在、災害の被災者や失業でホームレスになった人に、一時的に場所を見つけ、仮説住宅を作って住まわせているが、精神的に安定し、被災者が別の住む所を見つけると出てもらったり、数年の期限が来ると被災者を追い出し、プレハブなどで作られた仮設住宅を取り壊してしまう。それでは国や自治体の税金の無駄使いである。何故ならば、仮設住宅を建てる時に税金で費用を使い、取り壊わす時にもまた税金を使っている。二重に使っているのだ。それよりは、安価なモービル=ホームを被災者に与え、どこか借地を見つけたら、ホームをその土地に移動させ、永久的に所有、住まわすことが出来る。国家が家を与える形になるのだ。
 阪神大震災の時やその他の災害時に家を失った人は(老齢で無収入であるため)、自力ではもはや家を建て直せないで土地は所有しているが更地になったままでいる。このような時、国や自治体が安価なモービル=ホームを与えれば、自分の土地に同ホームを移動させ、永久的に家を持つことが出来る。
 モービル=ホームを日本に普及するためには、日本の法整備をしなければならないが(特に不動産に近い性質の動産なので民法も少し変えなければならない)、普及すれば安価なので、被災者以外の人で家を持ちたい人のマイホーム実現にもなるだろう。その他に漁村など風光明媚な所にモービル=ホームを移動させれば、避暑など季節的な観光政策にもなりうる。
 その他に日本政府が大不況対策として取るべきものでやるべきことは、不況対策用の特殊なデノミネーションである。これは文字通りお金の単価を高い方から低い方に変える事であり、それによりお金の価値を上げる事である。例えば、今まで千円の値段であったものを百円に十倍名目上引き下げて、実質上百円の価値を千円にするものだ。
 かつて、昭和五十年代の高度成長の真只中の時は、経済成長による拡大生産により、人々の収入が上がり、毎年物価が少しずつ上がるクリーピング=インフレーション(自然インフレ)だったので、名目上の単価を少し切り下げるべき事を、当時の経済評論家や経済学者等エコノミスト達が唱えていたが、平成不況になってからは、まったく聞かれなくなった。しかし、考えてみれば不況の今こそデノミをやるべきなのだ。忘れられたものをやるべきなのである。
 何故かと言えば、今現在の長い不況下では給料やボーナスは上がらず将来、経済不況がどうなるかわからないという不安から、また年金ももらえないのではないかという不安から人々、消費者が俗に言う財布のヒモを締めるということ、つまり人々が消費を大巾に控えるようになった。売れないから値下げ、激安、価格破壊となり、多くの商品の生産量は年々上がっているのに、価格が下がったデフレ現象になっている。デパートや大型スーパーは百円ショップで百円で買えるものを高く売っていたので倒産していた。
 このような時、不況対策としての特別なデノミを行うのだ。従来のデノミは千円から百円に十分の一に切り下げたとしたら、新しい紙幣を発行し銀行などに於て交換するやり方だが、これだと国民、消費者は何の利益も得ない。この場合の新しい特殊なデノミは現在、市中に出回っている量のお札やコインをそのままにして、政府が千円だった物を百円でかえるように宣言、布告するのである。そうすれば、今まで各消費者が持っていたお金が十倍に使えるようになる。千円を出さなければ買えなかったものが百円玉で同じものを買えるとなると、消費者は心理的に安くなったと錯覚し、思い込み、多くのお金を出し物を買うようになる。
 ただし、今まで持ったお金そのものが十倍の価値になったとすると、異常に購買力が上がり、市中に出回るお金が増えて、超インフレになるので、少しずつ時期を見て、政府や日銀が市中から貨幣を回収するべきである。十倍の価値のデノミは極端だが、一・五倍や二倍のデノミなら適性なのではないだろうか。
 政府や日銀は、新紙幣を発行することもなく、定額給付金のような税金を国民に出費することもない。

(流星群だより第16号掲載)