自分で出版したいという人々は多い。自分が歩んで来た人生を誰かに伝えたい。また、自分が長年培って来た知識や趣味の集大成を本にまとめたいなどと。それをするには、自費出版として発表するのが一番。というより、日本の出版社は、有名な小説家や文筆家、会社や公務員など専門家として見做される職務に就いている者でないと、執筆を依頼して来ないし、相手にしてくれないからだ。ヨーロッパやアメリカのように、有名人ばかりでなく、内容さえ良ければ、一個人でも持ち込み原稿で出版してくれ、読者が内容を判断し本を買うような出版市場でないからだ。詩、俳句、短編小説などは、会費を支払い同人として同人誌に発表できる。が、競争があるので作品掲載はあまりチャンスはない。
自費出版には自費出版を扱う出版社か、自ら費用の安い印刷所を見つけ印刷製本にする方法と、パソコン、ワープロでやり、デパートなどで製本セットを買い安価に作る、自家製本とか私家本とか呼ばれるものを出版する方法がある。安い印刷屋で百部ぐらいで十五万円ぐらい掛かる。たとえお金を掛けても売れる見込みはない。無料で配るか、知り合いに義理で買ってもらうのみである。出版取り次ぎルートに載らないからだ。それ故、出版実績にはなるが、商売にはならない。
その他に、自費出版の方法があるので紹介したい。一つは自分で点字で自分の詩や俳句や短歌など簡易な作品を打って残す方法と、もう一つはポーランド人の医者が考案した世界語、エスペラント語で自製本をつくり、出版ルートに載せてもらう方法である。
先ず点字について。点字は言うまでもなく盲人が指で触れて読む六点による文字である。点字で自分の作品を作るには、基礎的な点字を習わなければならない。学ぶためには、福祉施設や地域の社会福祉協議会の点字グループによる点字入門講座を受講するのだ。盲人に奉仕するという意味で、受講料は無料の場合が多い。安い入門テキストと点字のプラスチック用器で、最小限基礎的な点字は打てるようになる。これにより、俳句、川柳、短歌、短い詩などの自分の作品は、点字用紙を買わなくても、カレンダーの紙や不動産会社の厚手の広告の紙などに点字で二〜三部作っておいて、盲人に配れるようにしておくことだ。普通の自費出版のように百部も作らなくても点字は、盲人に奉仕できるので数部でも公的性がある分出版実績と認められるだろう。
小説など長いものは点字にして配るのは難しい。カッコや記号を多く学ばなければならず、上級レベルの点字技術が必要である。それに長編だと大変厚くなってしまう。又、盲人は有名な作家の作品を読みたいので、それらをボランティアグループが慎重に間違いなく点訳したもののみ点字図書館に納品できるからである。名作でさえ未だわずかしか点訳されていないので、名作の点訳が優先で、図書館は普通人の小説は求めていないのだ。
もう一つの方法が世界共通語であるエスペラント語で出版することだ。約百年前に戦争の相次ぐヨーロッパで、言葉を統一する事が平和につながると信じ考案したのが世界共通語エスペラント語で、世界約百ヶ国、約百万人が言語を理解している。日本でも東京都新宿区早稲田に日本エスペラント学会があり、各地にエスペラント会があり、学習されている。エスペラント語で訳された物は各国の文学や社会科学や自然科学の本もあり、その中にワープロ製本も図書目録に入っている。それ故、各地のエスペラント会で、何年かエスペラント語を学び、自分の書きたい物をエスペラント語で書き、ワープロで自製本をつくり、日本エスペラント学会の出版部に申告をして、世界中に配本してもらう事が出来る。常時十部ぐらい配本出来るようにしておけばよい。これだと、そんなに売れるものではないが、充分出版実績になる。日本の出版社が相手にしてくれない研究者や作家などに最適であろう。
もう一つの自費出版の方法
(流星群だより第8号掲載)