二〇〇四年のアテネ=オリンピックに於ける日本チーム対オーストラリアチームの野球の試合は私達、野球の観戦者に新たな事を教えてくれる。それは何かというと、同じ西洋人がやる野球でも、野球発祥の地であるアメリカの選手とオーストラリアの選手とでは、そのプレーに於いて能力的違いが出ている事だ。それについては、日本の野球評論家やスカウトなどが気付いていない。
アテネ五輪では長嶋全日本監督が急病で倒れ、中畑清氏が代行し、銅メダルを獲得した。選手はセ・パ十二球団の最高の打者や投手が選ばれた日本最強チームとして五輪に望んだが、オーストラリアに完敗を喫した。各チームの強打者が完膚なき程に押さえられたからだ。その時のオーストラリアのピッチャーが、先発をしたオーストラリア=ナショナルリーグのエース、オックス・スプリングス投手と、それをリリーフした阪神在籍のジェフ・ウィリアム投手である。この二人の力投によって、日本チームは〇敗をくらってしまった。特に先発したオックス・スプリングスは、日本の最強打線をほとんどと言っていいくらい外野に打球を運ばせなかった。
このようなオーストラリア人投手の力投には、日本のほとんどの野球関係者、特にスカウトが気付いていない特徴がある。それはメジャー=リーグを中心とするアメリカ人選手とオーストラリア人選手との身体能力に違いがあることだ。特に、オーストラリア人投手の投球はアメリカ人のそれと大きな違いがあるように思われる。
まず、オックス・スプリングス投手。投球の速さはさほどない。アテネ=オリンピックのゲームを見た限り、スピードは画面で百三十キロ後半から百四十キロぐらいしかなかった。しかし、それにも拘わらず、日本のプロ野球、最強打者達を集めたチームが、ほとんど外野に打球を運べなかった。この投球、球質を見ていると、速くはないが大変重い球質で、オーストラリア人独特な投球で、アメリカ人の投手と違うように思われる。オーストラリア人独特の人種的な違い、さらに身体的な違いが球に出ているように思われる。オックス・スプリングス投手の重い球は、球に体重の載せ方がアメリカ人と違っているのではないか。西洋人については顔で見分けが付かないが、日本人の野球関係者は、そのことに気付いていないように思われる。
もう一人は、アテネ=オリンピックの試合でオックス・スプリングス投手を八回からリリーフしたジェフ=ウィリアム投手。アテネ五輪の前年に星野仙一監督の元で優勝した時のリリーフ=エースで、初めリリーフ投手がいなかったのを同投手が独特の投球をしていたので星野氏がリリーフに起用したのだった。ウィリアム投手の特徴は左の横手投げ、サイドスローから鋭角に斜め横に曲がり落ちるカーブで、角度があり過ぎ、右バッターの脛に当ってしまう。この投球で阪神の優勝に貢献した。このような投球は、五十年以上のプロ野球の歴史で、黒人や白人のアメリカ人選手には見られなかった。強いて言えば、昭和四十年に「八時半の男」として活躍した宮田征典投手の鋭角に落ちるカーブ「落ちる球」以外、西武や横浜ベイスターズでリリーフで活躍したサイドスローの右投手、デニー友利ぐらいである。
オーストラリア人とアメリカ人の野球能力の違いについて日本の監督、コーチ、スカウトなどは気付いていない。特にオックス・スプリングス投手に注目し、日本のプロ野球へスカウトしようとしなかった。これからは、日本のプロ野球に、オーストラリア人ばかりでなく、中国人やタイ式ボクシングのタイ人選手のムチのような柔らかさを持ったアジア人など、日本の選手と違った能力を持つ人種を入れるべきだ。
アメリカ人とオーストラリア人の野球選手の違い
(流星群だより第7号掲載)