「書初め」

新しい年の二日目、令和5年(2023年)1月2日(火曜日)の起き立てにある。現在、パソコン上のデジタル時刻は、2:42と刻まれている。言うなればこの時刻は、今年のわが文章のスタート、すなわち昔流に言えば「書初め」を為す。しかしながら子どもの頃にあって正座し、半紙に筆字を書いていたときのようなワクワク感はまったくない。さて、慣れるまで当分気を付けなければならないことの一つは、文章において年数を書き違えないことである。現在、わが心中には「歳月は人を待たず」と、学童の頃に学んだ「光陰矢の如し」という、成句が浮かんでいる。加えて、わが咄嗟の造語すなわち、「歳月は人を脅かす」という、成句が浮かんでいる。確かに、人生の晩節を生きるわが心身は、出来立てほやほやの成句の真っただ中にある。そして、甚(いた)く脅かされている。新しい年においてこの先1年間、わが御供をするのは真新しい机上カレンダーである。これにそって、わが悲喜交々の日常生活が進んでゆく。いや、多くは、悲しい出来事だけを刻んでめぐってゆく。万感きわまりない、片手・手の平程度のカレンダーの仕打ちである。今、心してそれを見ている。すると、きのうには「初詣」、そしてきょうには「初荷」と「書初め」の二つが記されている。確かにカレンダーは、古来、日本の国の原風景や様々な歳時(記)がコンパクトに記されたありがたい教本である。一方それにそって日々、新たな人生の侘しさや寂しさが記されてゆくものでもある。確かに、この文章は新しい年の書初めである。しかし、ワクワク感はない。こんな調子で、新しい年はめぐってゆく。「人間、万事塞翁が馬」。なんだか遣る瀬無く、切ない「書初め」である。