ちよっぴりだけ、明るい文章

十月二日(日曜日)、きのうの初日の天候から鑑みれば、どうやら十月の気象は不順なく、晩秋の好季節にありつけそうである。きょうの夜明けの空は、白地というより淡い青地に、朝焼けの彩りが浮いている。清々しい朝空である。自然界の穏やかな恵みは、眠気眼を見開きにしてくれる、長閑(のどか)なひとときである。おのずから、昼日中の秋天の恵みが楽しみである。きのうは妻の髪カットの引率同行で、大船(鎌倉市)の街にある、妻が行きつけのお店へ出かけた。お店とは何たる不穏当の表現であろうか。やはり、美容院と書くべきか? と戸惑った。しかし、お店とした。熟慮の末に、美容院よりお店のほうが適当に思えたからである。言うなれば美容院という言葉にはなじまない、安価を旨に十五分程度の髪カット専門である。私は妻と一緒に店内に入り、仕上がりを店内で待って、終われば二人して外に出る。髪カットの済んだ後の妻の表情は、良く写真などで見かける仕様「前、後」のように、様変わりに明るくなっている。老婆になっても女性! 美容にかかわる女性心理は、男性の推測をはるかに超えるものがある。確かに私自身、散髪の後の気分は、かなり解(ほぐ)れてくる。しかしながら、美容院(髪カット)後の女性の場合は、この程度の気分の解れで済みそうではない。すなわち女性の場合は、美容(見目形の良さ、綺麗、美しさ)は生涯のテーマであり、憧れと言えそうである。いや、ないものねだりでもある。もちろん、妻も同類項である。このことには十分、私は同意・納得するところがある。髪カットが済むと二人は、気分良く買い物回りを済まして、帰途に就いた。妻の予約時間は、午後三時半だった。わが家へ返り着いたのは、ほぼ五時だった。リモコンスイッチでテレビを点けた。読売ジャイアンツ対横浜ベイスターズ戦は、運よくプレイボールだった。私たちは、試合終了まで見入った。ファンとする阪神タイガース戦でもないのに、手を叩き、固唾をのんで、ベイスターズを応援した。その甲斐あり、1対0で、ベイスターズが勝利した。他力本願だがこのとき、タイガースの3位が確定した。負けたジャイアンツが4位になり、タイガースはCS(クライマックス・シリーズ)への進出を決めたのである。私は風邪薬を服んで、床に就いた。明けても、いまだに鼻炎症状を残している。しかし、いつもと違って、ちょっぴり明るい文章が書けたのである。きょうのわが日課には、妻の髪染めの手伝いがある。わが自主行動であるから、これにはまったく腰の重さはない。妻のお返し言葉は、いつも決まって「パパ。ありがとう」である。大空の彩りは消えて日本晴れ、すなわち青一辺倒に変わっている。十月の気象は、不順だった九月の罪滅ぼしをしてくれそうである。