2015 初夏

初夏

望月窯周辺

 週末に訪れる望月窯は、まずウグイスの鳴き声に迎えられます。それはそれは大歓迎というように鳴き続けてくれるのです。まるで待ちこがれていたようななきかたで、思わず笑ってしまいます。その声は一日中聞こえています。それから、キジの雄が隣接する麦畑にやってきて、けたたましい鳴き声と「ほろ打ち」の歓迎です。私のカメラはちっぽけで、望遠ができないので、その姿をはっきりとは写すことが出来ませんが、近くまでやってくると、慌ててカメラほとりに行くしまつです。一眼レフのカメラが欲しいと思うのですが、これまた夢中になってしまう恐れがあり、これ以上忙しくなったらどれもこれも中途半端になってしまうのであきらめています。それでもちっぽけなカメラで撮ったキジの写真をお見せします。



望月窯の畑もだいぶ野菜達が育っています。
にわか農婦のひとり仕事です。笑って下さい。



散歩

 私は今、毎週末を実家の望月窯で過ごしています。母の納骨がまだできていないためもあるのですが、父母、弟が暮らしていた家でもあり、三人に会いに行くような感覚です。
 やっと時間的にも精神的にも余裕が出て、実家の周辺を散歩するのも楽しくなりました。田んぼが次々に田植えがされていきます。蛙も鳴き出しました。


朴の木の物語

 主宰の宗生が若い頃に、夫婦で狭山湖にドライブをして、林の中を散策していて朴の木の下に辿り着いた。ちょうど新緑の頃で、大きな朴の葉を通して差し込む薄緑色の柔らかな光に包まれて、得も言われぬ幸福感を味わった。
 その日以来、その感動が忘れられず、何度かそこへ訪れてみたが、どうしてかその場所に二度と辿り着くことが出来なかった。
 周囲を雑木林に囲まれた茨城のこの地に移住したとき、敷地内に是非「朴の木」を植えたいと願っていたが、かなえられぬまま歳月が流れた。  その後インターネットで長野県平谷村オーナー農園情報というホームページに田舎料理教室『ほおば餅作り体験』という記事が掲載されていて、連絡先が平谷村役場となっていた。電話をかけ事情を話すと、「心当たりがあるので聞いてみます」と折り返し電話を下さるとのことだった。
 しばらくして「飯伊森林組合で扱っていますから、電話をするように話しておきました」と返事が来た。
 すぐに森林組合から電話があり苗木を注文することが出来た。
 今時、珍しく親身になって下さった平谷村役場の女性職員と飯伊森林組合の男性に、何度も何度も感謝の言葉を述べた。
 今、その朴の木は見上げるばかりに成長して、初夏には薄緑色の木陰を作ってくれている。


正月
つけ睫毛の福笑い

  大晦日の夜、私と妹はテレビの前に陣取り、お互いの化粧道具を持ち出して、例の「つけ睫毛」、「アイライナー」、「つけ睫毛用の接着剤」をテーブルの上に並べた。用意は調った。私は滅多にしたことのない 化粧ををして、長い睫毛の美女に変身するべくおもむろにパッケージを開けた。
「携帯電話ある? ちゃんと撮ってよね。掲示板に載せるんだから」
 私はまだ終わっていない化粧の途中で、頭の中はすっかり美女気分。つけ睫毛のパッケージを開けてびっくり、つけ睫毛にはすでに接着剤が塗ってあり、せっかく買った「つけ睫毛用接着剤」は不要になった。いやな予感。
 つけ睫毛を取り出して目元に貼り付けようとしたけれど、まず眼鏡のない目はぼやけてしまい、おまけに、片目をつむらねば自分の睫毛の生え際に貼り付けることが出来ません。
 どうにもうまい具合に貼り付けることは出来ず、どうにか近くに貼り付けてアイライナーで目の縁にラインを引こうとするのだけれど、速乾性なのですぐに乾いてしまい、ぼやぼやしていると筆先が固まって線が引けない。
 そのうちに笑いがこみ上げてきて、お互いにへんちくりんな目頭を見て、大笑い。 おかしさは爆発的で涙が出るほど笑ってしまい、手先が震えて、何も出来なくなってしまった。 「みんな、どうやって貼り付けているのかしらね」
 などとぼやきぼやき貼り付けようと集中すると、口の方が曲がって、お互いにその様子を見ては、また爆笑。
 その夜はあきらめて、「つけ睫毛どうする?」と私が妹に言うと、妹が、「畑のフクさんとヒサちゃんにつけたらいいんじゃない?」
 と答えが返ってきた。
 そして、翌日、寒い寒い畑で、二人でフクさんとヒサちゃんにつけ睫毛をつけたのでした。