大岡昇平原作の「野火」、戦後の闇市に暮らす人々を描いた「ほかげ」などの反戦映画を撮影した監督に塚本晋也という人がいる。
その監督の2006年上映作品に「HAZE」がある。
目を覚ました時、狭いコンクリート空間に閉じ込められていることに気づく男。腹部には大量の出血があり、何もしなければ、ただ死を待つのみである。
男は恐怖を感じながら、脱出を試みる。
ジャンルとしては、スリラーだが、人生を暗示しているのではないかとも受け取れた。
そのことは、「野火」、「ほかげ」も考え合わせると、より深く感じられる。
過酷な状況に置かれた人々、何も動かなければ死ぬだけ。生きるためには、動いて食べなければならない。
人は、どんなに過酷な環境に置かれても、生き抜こうとする盲目的なエネルギーを持っている。あまりの過酷さに死を選ぶ者もいるが、多くの人は、不利な状況の中にあっても、何とか突破口を見つけ出し、一歩でも前進しようとする。
そんな「本能」といってもいいようなエネルギーを本作品では描いているように感じた。
HAZE
