十一月十日(日曜日)。目覚めは早かったけれど、長い時間寝床に寝そべり、起き出しはほぼ定時である(5:34)。起き出しにあっては、二つのことを心中に浮かべていた。一つは、「生老病死(しょうろうびょうし)」である。あえて、書き記すこともない簡易な四字熟語だけれど、机上に置く電子辞書を開いた。「生老病死:仏教でいう、人間の免れ得ない四つの苦しみ。『生』は、生まれること。『老』は、年を取ること。『病』は、病気にかかること。『死』は、死ぬこと」。そして一つは、「衣食住」であった。こちらは電子辞書にすがるまでもなく、日常生活(暮らし向き)の基礎を為すものである。さて、長く寝そべっていたことの訳を記すとこうである。スマホを手にすると真っ先に、このニュースに出遭ったからである。【四国の大規模停電、原因は「周波数低下リレー」 何らかの原因で「本州向きの電気の流れが急増し、四国内が電力供給不足」に 最大36万5300戸が一斉停電…最大で香川6万戸、愛媛11万戸、徳島11万戸、高知8万戸(11月9日、8:44、高知テレビ配信】。こののちは寝そべりながら、詳細記事やこれにかかわる多くのコメントを読み漁っていた。それほどに私は、この記事に度肝を抜かれて、そして突然の停電にかかわる、コメント者の体験上の教えを学んでいたのである。教えは、人それぞれにかぎりなくあった。それらにあっては、用意周到な備えに莫大なお金を要した人、あるいは当座の光を求めていろんなものを備え置いた人など、まさしく人それぞれだった。貧乏の私は後者の備えに意を固めて、すぐに懐中電灯を部屋のあちこちに置くことを決めた。同時に、予備の備えとしてたくさんの乾電池を買い置くことを決めたのである。だから、この先の買い物にあっては飲食物に加えて、懐中電灯と乾電池が増えそうである。人間だれしも命を長らえるためには、衣食住足りて、さらには金銭の蓄えがあり、自然災害(天変地異の鳴動による)および人為の災難(事故、事件)からの逃れ(防災)ことこそ、最も肝要である。しかしながらこれらは、「言うは易く行うは難し」である。然(さ)もありなん、現下の日本社会にあっては、そんな大それたことではなく、日常茶飯事に詐欺、強盗、人殺し事件の多発にある。生老病死はもとより、人間社会は「備えあれば患(うれ)いなし」とはいかない宿命にある。四国地方の大きな停電は私に、生きることの困難さを教えてくれたのである。まさしく自然災害および人為のもたらさす災難は忘れた頃に、いや突然襲ってくる。夜明けの空は、のどかな初冬の日本晴れである。大空に向かって、叶わぬ神頼みに祈るしかない、儚(はかな)い人間の命の長らえである。