春は、「思い出」

2月17日(金曜日)。起きて、寒さで心身が縮こまっている。春風駘蕩とは言えない、おどろおどろしい夜明け前にある。このところはほぼ毎日、強風と雨に脅かされて、今なお身に堪える寒気が居座っている。現在の寒さも、この延長線上にある。だからであろうかやけに、子どもの頃ののどかな春の情景が浮かんでいる。畦道のスカンポやギシギシを採り、石垣に座り塩まぶしで食べた。土手のノビルやツクシンボを摘んで、花籠に入れてわが家へ持ち帰った。「内田川」の川岸へ小走り、萌え出ていたヨモギやセリを摘んだ。畑には青々しい高菜、土手には菜の花が黄色く映えて、白い蝶々が飛びかっていた。田んぼにはレンゲソウが緑の絨毯をなしはじめていた。本格的な春の訪れが待ち遠しいところである。しかしながら春は来ても、もはやこんな光景には出遭えない。思い出づくりで、冷えている心身を温めている。