夏風邪、秋風邪、「私はドジを踏んでいる」

九月十六日(金曜日)、季節は夏の名残の残暑をかなぐり捨てて、大車輪で秋へめぐり、日々秋の色合いを深めている。パソコンを起ち上げると、メディアニュースの並ぶ項目の筆頭には、「台風14号、日本列島は大荒れの予想」と、出ていた。台風11号は、沖縄諸島に被害をもたらした。続いて発生した台風12号と13号は、幸いにも予報は外れて、途中で消えた。欲張りの私は、台風14号もそうあって欲しいと願っている。時あたかも日本列島は、「実りの秋」をはじめとしてさまざまな「冠の秋」たけなわ(酣、闌)にある。せっかくの好季節にあって、相次ぐ台風のお出ましは真っ平御免である。ところが、こんな好季節にあって私は、ドジを踏んでいる。実際には私は、夏風邪が治りきらない上に、秋風邪を重ねている。それゆえに、気分の重たい秋を被っている。そのせいで、せっかくの「馬肥ゆる秋」、「食欲の秋」共に、台無しである。つくづく、阿呆な私である。なぜなら、行きつけの「大船市場」(鎌倉市)には、好物の栗をはじめ「実りの秋」満載である。これらにありつくには、まずは憂鬱気分を食い気に代えなければならない。すなわち風邪治しは、目下のわが大きな課題である。確かに、私にとって風邪は、侮れない難敵である。その証しに風邪は、食い気と共に、文章を書く気分を殺いでいる。実際にも風邪は、この先の文章を阻んでいる。私にとって風邪は、ほとほと始末に負えない厄介者である。「自業自得だね、ドジを踏んでいる、おまえが間抜けだ!」。手元の電子辞書を開いた。「ドジ:まぬけ、へま、失敗、ぶま。ドジを踏む:へまをする。間の抜けた失敗をする。」もちろん、電子辞書にすがるまでもなくこれらの言葉は、不断わが身に取りついている日常語である。私は気分直しにしばし、夜明けの秋空を眺めている。薬に頼らずとも風邪と憂鬱気分を治してくれそうな、胸の透く清々しい日本晴れである。このことでは案外、14号台風予報にあっては、気象庁はドジを踏みそうである。