お盆に朝焼け

 八月十三日(土曜日)、目覚めたら部屋の中は色づいていた。びっくり仰天、跳ね起きた。家じゅうのすべてが、朱色に染まっていた。雨戸を開けっ放しの窓際にたたずんだ。大空いっぱい、視界いっぱい、見事な朝焼けが広がっていた。自然界の妙味というより驚異、いや脅威にさえ思えた。たった数分間の大パノラマだった。なぜ? こんなことが起きるのか?。今はすっかり消えて、朝日の見えない小雨模様にある。朝焼けは鬼のしわざか? それとも、霊界のしわざなのか。生きている者への、命を亡くした御霊の怨恨なのか?。
 きょうは八月盆の入り日(十三日・土曜日)である。御霊に、恨みつらみを買うとしたら、大いに腹が立つ。なぜならお盆は、生きている者が御霊にたいし最も心を尽くし、かつしめやかに営む年に一度の催事である。この証しにどこかしこの家族は、御霊を懇切丁寧にわが家(里)へ迎え入れている。そして、しめやかにも先祖代々の家族団欒に和んでいる。だとしたらお盆の朝焼けは、御霊のお礼返しと思いたいものである。鬼のしわざと言って息巻くより、もちろん心落ち着くところでもある。きょうは、文章は休むつもりで不貞寝していた。しかし、朝焼けに起こされた。飛んだとばっちりとは言いたくない。