晩秋のよく晴れた寒い朝だった。
駅。
通勤客たちで溢れている。
これから一日が始まる。
戦いに向かう戦士たち。
スーツ姿。
コートの裾が風に揺れている。
脇目で見ながらふと気づく。
自動販売機にトリュフ入りポタージュスープが売られている。
目を留めている人など誰もいない。
どんな味なのか。
黄色の缶から目を離せなくなる。
210円。
少し高い。
それでも。
ほんの少しでいい。
新鮮な体験を求めていた。
迷わずボタンを押す。
ガラガラと音を立て缶が取り出し口に落ちる。
取り出す。
熱々。
蓋を開けると褐色のスープ。
太陽の光にほのかに照らされている。
ポタージュスープのイメージと違う。
果たして。
一口。
今まで飲んできたポタージュスープと何かが違う。
チーズ?
内容物の欄を見ると、確かにチーズが入っている。
濃厚。
脳が喜びを感じる。
しかしトリュフの味はわからない。
食べ慣れていないせいか。
トリュフ入りを謳っているが、内容量が少ないのか。
私の舌が鈍いのか。
それでもチーズの濃厚な味わいが満足を呼ぶ。
一気に飲む。
まだまだ足りない。
もっと飲みたい。
そんな気持ちになる。
もう一度。
販売機を見かけるたびに探す自分を想像した。
ポタージュスープに心が高まってゆく。
これから私の一日も始まる。
朝日が冷えた私の身体を少しずつあたためていた。
トリュフ香るポタージュ
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