北浦和美術館

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北浦和美術館へ行ってきました。
夏の暑さが和らぎ始め、少しずつ過ごしやすい気候になってきました。
目的は「種蒔きと烏」。
Nerholという美術家の展覧会です。
一目見た印象は面白いな、でした。
何を伝えようとしているのかはわかりません。
しかしながら、自然の風景や人物が水の波紋のような柄に遮られ、実体がはっきり見えない。
ただ面白い作風だな、と思わされました。
部屋を移動すると、床に鏡が置いてある。
そこに自分の姿を映す。
すると、鏡によって、また映す角度によって、まったく違った自分の姿が浮かび上がってくる。
何かが少しだけ見えたような気がしました。
この美術家は何を伝えようとしているのか?
帰りにポストカードを購入し、家で改めて見直してみました。
人が描かれている。
波紋がその姿を隠している。
タイトルは「インタビュー」。
頭が回り始め、ある時、ふっと意図がわかったように思いました。
インタビュー。
話を聴く人は、話す人のことをいろいろ聴いて理解したように思う。
しかしながら、聴く人には聴く人の認識のフィルターがかかっており、その目で聴くため、実体からは離れている。
また、話す人本人にも認識のフィルターがかかっており、自分のことを正直に話しているつもりでも、それもまた歪んでいる。
話す人も聴く人も、それぞれのフィルターにより、本当のことは何もわからない。
お互いに幻想の世界の中を生きている。
しかしながら、本当のこと、と、認識との相互作用により、何がしかの世界像が浮かび上がってくる。
これが人間の姿であり、その認識された世界像により、人は生き生きともするし、絶望もする。
フィルター自体を変えて観ることによって、世界像は変わる。
人は変わる。
そんなことを伝えたいのだ、と気づきました。
しかしながら、フィルターを変えることはそれほど簡単なことではない。
毎日の小さな積み重ね。
それが少しずつフィルターを変えていく。
その時、私はこの美術家の作品を本当に味わえた、という満足感でいっぱいになりました。
とても学びの深い展覧会でした。

本当の姿は見えず秋の空