河口湖

 10月16日(水曜日)。朝、6時きっかりに目覚めて起き出している。すぐさまパソコンを起ち上げて、脳髄はいまだ就寝状態のままにキーを叩き始めている。生来、私は不器用で、とりわけわが指先はのろまである。ゆえにこの先どんな文章が生まれて、さらにはどれぐらい先に結文になるのかと、精神不安に苛(さいな)まれている。
 視界に朝日の輝きはない。けれど、雨なくまた木の葉が揺れる風もなく、のどかな曇り空の状態にある。このことでは昼間へ向かうにつれて、胸の透く秋晴れの空が望めそうである。きょうの天気予報は聞きそびれている。早くもない、遅くもない定時(6時)の目覚めは真面(まとも)だが、文章を書くにはこころ急いて、心中はドタバタと苛(いら)ついている。
 きょうは、いつもとは異なり格好のネタがある。めったにないこんなときはみずから決めている制限時間に切迫されることなく、十分に書き尽くしたい思い山々である。過日「スポーツの日」(10月14日・月曜日)にあっては予告どおり、娘家族(夫婦と高2の孫娘)そして共にわが夫婦連れだって(5人)、娘の連れ合いの運転にすがり車で行楽へ出かけた。行き先は、富士五湖の一つ「河口湖」だった。5人にとっては、初めての見参地(けんざんち)だった。5人そろっての行楽もまた、初めてだった。さらにわが夫婦に限れば、人生最後になるかもしれないと思えた遠出の行楽だった。スマホで確かめると、河口湖の在りどころの行政名は、山梨県富士河口湖町と記されていた。さらに確かめると近場には、富士登山において王道を成す「吉田口ルート」を擁していた。
 河口湖をメインにして河口湖町は、文字どおり富士山を眺める近隣からの行楽客、さらには遠くの国内はもとより、外国からわんさと訪れる観光客で、飛びっきり(特等)の賑わう観光地を成していた。スポーツの日に違わずこの日には、好天気すなわちすこぶるつきの行楽日和が訪れていた。その下で私たちの遊覧は、三つまでもしでかした。一つはケーブルカー、一つは遊覧船、さらに一つは水面を猛スピードで走るゼット船だった。混雑する私たちの周囲の人々は、国知らずの外国人が多くを成していた。私自身はまるで、海外旅行の気分、桃源郷の楽園を愉しむかのようだった。ほかのみんな(4人)も同様の気分で無事、河口湖への行楽を終えたのである。
 やはり指先ののろまのせいで、時間ばかりが過ぎて行楽の一部しか記せなかった。至極、残念無念である。望んでいたとおり、天高く朝日が輝き始めている。