望月窯だより

先週訪れた実家の出来事で、今朝の前田さんの投稿で思い出したことがあったので、書き記しておくことにした。庭の柿の木が四本あるのだが、枝が伸びて手に負えなくて、馴染みの大工さんに昨年太い枝を思いきって切り落としてしまい、今年は実は諦めていたのだけれど、次郎柿の垂れ下がった枝の先に五個ばかり実が付いていた。前回訪れた時はまだ青かったのでそのままにして二週間ばかり経って今回訪れてみると、姿形が消えていた。「ああ、やられた!」と枝の先の地面を見ると、一口ほど遺した実が無惨にほったらかしにされていた。オレンジ色に色づいていた。腹立ちをぶつける相手の姿はなく、カラスの鳴き声が聞こえてきた。妹が「バカヤロウ!」と鳴き声の方に向かって叫んだ。
「よしなさい。カラスは悪態をつくと仕返しをしてくるってお父さんがいつも私に言っていたわよ」
 と、悔しさを押し秘めてたしなめた。
 その時、頭上から枯れ枝が足元に落ちてきた。
「ほらね、カラスに聞こえたのよ」
「ほんとだ! 憎らしいこと」
 二人で顔を見合わせて笑い合った。