前田静良

ひぐらしの記

寝起きに浮かべていた、「待つ」心境

十一月八日(火曜日)、寝起きにあって私は、心中にこんなことを浮かべていた。人生において楽しくうれしいことのひとつは、駅のプラットホームや改札口などにおいて、長く佇み待つ出会いどきの心境かもしれない。とりわけかつて、ブルートレイン(夜行列車)...
ひぐらしの記

立冬

「立冬」(十一月七日・月曜日)。暦の上では冬の季節に入ります。ときおり、「小春日和」はあるとはいえ、この先、日々寒気が増してまいります。いや、寒気だけではなく、それゆえ気分的にもつらい季節が訪れます。おのずからわがモチベーションは萎えて、文...
ひぐらしの記

寝起きの戯言(ざれごと)

十一月六日(日曜日)、夜明けまでには未だ遠いところにある。部屋の明かりは、頭上に二輪の蛍光灯が灯るのみで、窓ガラスの外の様子は暗闇である。難聴の両耳に響くものは、五月雨式にぽつりぽつりと跳ね返る、寂し気なキイの音だけである。まったくの静寂で...
ひぐらしの記

生きている

十一月五日(土曜日)、明るい文章を書きたいのに書けないのは、わが罪であろう。読む人が少ないのは、文章の不出来のせいであり、確かなわが罪である。「文は、人なり」。こんなことを心中に浮かべながら、起き出している。今や、起きることだけが、生きてい...
ひぐらしの記

胸の透く、日本晴れ

十一月四日(金曜日)、きのうに引き続いて、胸の透く日本晴れの夜明けが訪れている。きのうは「文化の日」(十一月三日・木曜日)。文化の日前後は一年じゅうで最も雨なく晴れの日が多いという、過去の気象データに背かず、面目躍如たる晩秋の好天気だった。...
ひぐらしの記

文化の日

頃は良し、晩秋の大団円の「文化の日」(十一月三日・木曜日、祝祭日)の夜明け前にある。私は二度寝にありつけず、眠気眼と朦朧頭、加えて憂鬱気分の三竦(さんすく)みの状態にある。それゆえに、せっかくの好季節は、ズタズタに台無しである。起き立ての私...
ひぐらしの記

惜しまれる「命」

十一月二日(水曜日)、きのう一日、ぐずついていた天候を撥ね退けて、淡い日本晴れの穏やかな夜明けが訪れている。好季節の晩秋にあっては、欲張って日々こんな夜明けが欲しいところである。しかし、そうは問屋が卸さないのは自然界の常である。だとしたら、...
ひぐらしの記

十一月初日

十一月一日(火曜日)、壁時計の針は五時近くにあるのに、窓の外に夜明けは見えず、未だ暗闇である。しかし、このところの晩秋の好天気を引き継いで、夜明けの空に雨模様はないであろう。いや、そう願っている。私は、しばし書かずに済んでいた新型コロナウイ...
ひぐらしの記

十月末日

十月三十一日(月曜日)、のどかな晩秋の夜明けが訪れている。朝日は隠れているけれど、大空には浮雲の欠片さえなく、時を追って日本晴れに変わるのであろう。しかし、寝起きが遅れて心急いて、私はまともな文章が書けない。こんなときは休むにかぎるけれど、...
ひぐらしの記

『おんな太閤記』

十月三十日(日曜日)、二度寝にありつき遅く起きて、慌てふためいている。すっかり夜が明けて、見渡す限りまったくの雲なく、青く澄んだ晩秋の日本晴れにある。本当であれば気分良く、長い文章がスラスラ書けそうである。ところがそうとはいかず、殴り書き、...